前回の「骨盤矯正って できるの ?」で
骨盤矯正は仙腸関節を動かす技術があれば可能だが、その必要性には疑問が残る!
という私見を述べました。
今回は、骨盤矯正の必要性について考えてみたいと思います。
骨のズレが痛みを引き起こす?
まず最初に考える必要があるのが、「骨のズレが痛みを引き起こす原因に成り得るのか?」ということです。
世の中には、変形性膝関節症や変形性股関節症、関節リウマチなどの疾患により骨の変形をきたしている方が数多くいます。
病気が進行し骨の変形が進むと、骨と骨の位置関係がズレてしまいます。
(関節リウマチは骨破壊まで進むケースもあります。)
このズレが痛みの原因であれば、骨変形がある人は全員痛みを訴えるはずですが、実際には痛みがある人もいれば無い人もいます。
この違いは何なのでしょうか?
「痛み」とは、そもそも何なのでしょうか?
はっきりさせておく必要がありそうです。
痛みとは
「痛み」を調べると、次のような説明がなされています。
- 痛みは不快な感覚と感情を伴い、通常、組織の損傷によって、あるいは強い侵害性の刺激によって引き起こされる。(南江堂医学大辞典)
- 痛みという日本語には「悪い」「嫌なもの」「取り除かなければならないもの」という印象がある。ところが英語のpain,-acheには「警告」という意味がある。そうすると、英語圏の国では、pain自体は悪いものではなく「正常ではない異常な状態を知らせているシグナル」とでもいうよいうな意味合いで受け取られている。(SJF関節ファシリテーション第2版)
この中で重要なのは、「正常ではない異常な状態を知らせているシグナル=警告」ということです。
体に病気やケガが発生した場合、異常が起こったことを知らせるシグナルが無ければ、人は自分の体を守ることが出来ません。
「何かが起こったよ!」
「気を付けてね!」
「このままだと壊れちゃうよ!」
「安静にしてね!」
と体が私達に痛みを通して教えてくれているのです。
痛みは体を守る防御反応の一つなんです。
問題なのは痛みそのものではなく、痛みを発生させている異常な状態が何なのか?ということになります。
つまり「痛みの原因」ですね。
痛みの原因
「痛みの原因」にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 皮膚損傷
- 筋損傷
- 骨折
- 炎症
- 癌
- 各種臓器の病気
- 心因性
- 関節機能障害
など、多種あります。
皮膚損傷とか骨折と聞くと、「痛み」を容易に想像できるでしょう。
しかし、最後の「関節機能障害」だけは “ (?_?) ” かもしれませんね。
これに関しては、医学の専門家である医師や理学療法士・作業療法士でさえ一部の人しか知らないという残念な状況ですから、一般の方が知らなくても当然です。
関節機能障害とは簡単に言うと「関節内の動きの不具合」ということなんですが、これが痛みの原因になると最初に言い出したのはアメリカの医師でした。
整形外科医のマクメンネル博士です。
博士は、痛みを訴えて病院を訪れる患者には、原因として関節機能障害が多いと言っています。
この関節機能障害というのは病気ではありません。
何らかの要因で関節にくじきのような状態が起き、いわゆる「引っ掛かり」とか「さび付き」といった状態になっていることを指します。
つまり関節が何らかの原因でその動きを失っているか、正常とは異なる動き方をしている状態といえます。 (SJF学会ホームページより一部抜粋)
骨変形・ズレは痛みの原因になるのか?
一般的には骨変形を痛みの原因として説明されことが多いですが、クライアントの変化を注意深く観察していると、骨変形やズレは直接的な痛みの原因にはならないと考えられます。
変形性股関節症や変形性膝関節症で骨変形と痛みを訴え来院されるクライアントがいます。
当院で施術をすると痛みが消失するケースがあります。
「人工関節の手術しかない」と医療機関で言われた状態のクライアントでも痛みが消失するのです。
でも、骨変形は変わっていません。
骨変形が残ったままで、痛みだけが消えるという現象が起こります。
これはどう考えるべきでしょうか?
何を言いたいのか分かりますよね。
「骨が変形していてもいなくても、骨がズレていてもいなくても、関節機能障害が生じなければ痛みはでない」
ということです。
見方を変えると、関節リウマチなど特殊な病気を除けば、関節機能障害による痛みが骨変形やズレを生じさせているとしか考えられないような変化を見せるクライアントもいます。
もしこれが事実であれば、骨のズレを矯正することが重要ではなく、関節機能障害の問題を解決することが痛みや骨変形・ズレを生じさせない為には重要だということになります。
関節リウマチについては関節炎による痛みや骨破壊の問題があるので、関節機能障害による痛みと骨変形との関係性だけでは説明できません。
これについては、また別の機会に話したいと思います。
関節機能障害に対する技術
関節機能障害(異常)に対処する代表的な技術が2つあります。
- 関節運動学的アプローチ ‐博田法(AKA‐H法)
です。
AKA‐H法は仙腸関節に対するアプローチを重要視し、SJFは腰仙関節へのアプローチを重要視しているという点など様々な違いはありますが、どちらもマクメンネル医師が提唱した関節機能障害(異常)を解決する技術であるという点は共通しています。
関節機能障害に対応するこれらの技術は、予防の観点からも今後重要性を増してくるでしょう。
セラピストが早くこの事に気づき、日本中いや世界中で技術が提供される日が来ることを願っています。
矯正は危険!
矯正は「強い力で瞬時に行う」か「持続的な力を加えて行う」かの手法を取りますが、「強い力で瞬時に行う」手法は、組織の損傷や関節機能障害を誘発しかねないという点で危険だと考えます。
結論として、
- 矯正は危険
- (骨盤)矯正は必要ない
- 技術は矯正技術ではなく、関節機能障害に対する調整技術であるべき
と考えます。
骨盤矯正を受けるか受けないか、最終的には自己責任になりますが、十分吟味したうえで決断されてください。
安易に受けると後悔することにもなりかねません。
実際に、「骨盤矯正でウエストマイナス10cm!」と書かれたチラシをみて骨盤矯正を受け、痛みと体調不良を発症したクライアントがアイムズに来院されたこともあります。
美容目的で施術を受け、体調を崩すなんてことはあってはならないことです。
ダイエットや美容に関する情報は気を付けて選んでください。
脊椎矯正?
最後に、骨盤矯正といって実は脊椎矯正をしている場合もありますので気を付けて下さい。
最初にも言ったように、骨盤で矯正できるところは仙腸関節のみです。
仙腸関節を触らないアプローチは骨盤矯正ではありません。
「骨盤矯正って何?」の時に掲載した写真のような骨盤矯正は、骨盤ではなく脊椎に対する矯正をしていると言えます。
どっちでも良いよと言う人もいるかもしれませんが、自分がお金を払って受けた施術が期待通りのものかどうか知っておかないと勿体なくありませんか?
しかも受けたことによって悪くなったりしたら目も当てられません。
健康になるためには、自らが知識を持たなければならない時代が来ています。
誤った健康情報をもとに不健康になる!
そんなことにならないように正しい健康情報を手に入れましょう!
アイムズのブログがその一助になることを願います。
今回は3つのテーマで「骨盤矯正」について私見を述べてきました。
皆さんの情報の整理に役立ちましたでしょうか?
これからも「健康情報」や「今日のクライアント」の記事を発信していきます。
是非、皆様の健康増進へお役立てください。
アイムズ(医科学研究所)は、健康情報の発信と共に、体のメンテナンスやコンディショニングのお手伝いをさせて頂いています。 情報を知りたい、体のメンテナンス・コンディショニングをしたいという方は、アイムズまでお気軽にお問い合せ下さい。 |
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